【サタデー長編】R1年6月『細雪』谷崎潤一郎

　第二回サタデー長編読書会の課題図書は『細雪』谷崎潤一郎でした。参加者14名、レポートのみ参加1名の、計15名の方にご参加いただきました。今回は和装での参加歓迎ということで、優美で華やかな『細雪』の世界を目からも味わいながらの開催となりました。

　以下、参加者の感想まとめです。

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・何度読んでも読み飽きることがない。無人島に1つ持っていくとしたらこの作品。「神は細部に宿る」という言葉を体現した小説であると思う。

・谷崎は変態と聞いていたがそんな感じがしなかった。結婚の条件をどんどん下げてゆき、最後は「もらってくれるならもう誰でもいいよね」となるのがリアリティーがあって泣けた。妙子がむちゃくちゃやらかすので心労で幸子の寿命が縮まりそうで気の毒になった。

・この作品が大好きで、通しで読むのはこれが3回目だが、今回もとてもとても面白く読めた。四姉妹および姉妹を取り巻く人々の、生き生きとしたそれぞれの性格、それをブレなく描写する谷崎の筆致が大好き！

・色んな事が起こっているのに、物語的に何も起こってないように感じるのは4人姉妹というこの基盤が崩れないからなのか。驚くような価値観も出てくるが、この時代はそれが当たり前だったということもわかるので嫌悪感はない。

・現代に生きる男性としてはお見合いの場面が多いわ階級差で結婚を断られるわスペック偏重だわで、うんざりするシーンが多かった。時代風俗のディティールを描いた記録物としてもおもしろく、戦前のイメージが結構変わった。

・それほどの盛り上がり場面もなく蒔岡家＆シスターズのゴタゴタが描かれているだけなのに、続きが気になってつい読んでしまう。つかの間彼らと一緒に生きているような気分になった。その後の蒔岡家のことが色々気になる。

・日本の昔ながらの価値観や美意識が移りゆくさまを描いた作品と評されることもあるが、どうもそれだけではない気がする。人間の自意識（はっきり言うとエゴ）や嫌な人間関係そのものを描くのにそういう変転する舞台を選びとった気もしている。

・婿養子の立ち位置が印象的だった。

・会のおかげで生きてるうちに読破できたことに感謝！繰り返されるお見合いは勿論、斜陽な一族という設定が秀逸で、行事や服装や思考回路、家の造りやお手伝いさんたち、交通機関や戦争の始まり方など、描写されるものを楽しめた一大絵巻。谷崎が好きになった。

・「細雪」と言えば「雅」な小説というイメージだったが、全然そうでもなくてびっくりした。「家柄」にとりつかれた人々を描いた悲劇、という読書後のイメージ。

・端的にそして短絡的に感想を書かざるを得ないほど私の言葉は稚拙なものに変えられてしまう作品。風景の描写は凄まじく、4人の機微は谷崎自身の心を通ったようであり、ありありと場面を想い描かせてくれる作品だと深く感じた。

・橋寺さん(御牧さんの前の縁談相手)との縁談は、結局は雪子と橋寺さんのどちらが断ったかがよく分からなかった。

・どんどん先が気になって読み進めてしまう楽しさがあった。やはり蒔岡の皆さんは趣味がハイソ。板倉が存外あっけなかったのは驚きだった。

・女性ファッションと女性心理に詳しすぎて、凄すぎてキモイと何度もため息をついた(褒め言葉)。いつまでもずっと四人仲良しが理想だが、30歳にもなるとそうもいかなくなる。不穏な終わり方はこれからの四人の前途多難の未来を象徴しているようで心配。

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　『細雪』は上・中・下巻、併せて1000ページ越えの作品で、どのくらい人が集まるのか少し不安でしたが、予想以上にたくさんの方に参加いただきとても嬉しかったです。遠方からご参加くださった方も多く、現代にも通じる谷崎の魅力、長編の読書体験のパワーを感じることが出来ました。ご参加いただいた皆さま、まことにありがとうございました。