6月の課題図書は『高熱隧道』吉村昭(新潮文庫)でした。参加者15名、見学1名、レポートのみ参加2名の、計18名の方にご参加いただきました。みなさまご参加いただきまことにありがとうございました。
以下、参加者の感想まとめです。
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・働き方改革や職場内環境の改善がうたわれている今、「高熱隧道」はいろんな意味で壮絶すぎた。技師目線での内容だったので、人夫側の話も知りたい。
・あまりにも怖くて読むのやめようかと思ったが一生懸命読んだ。案の定めちゃくちゃ疲れた。まず、物理的に怖い。黒部という場所自体が怖い。国家というものの恐ろしさも感じた。
・プロジェクトXの裏側にも、放送できないような闇があったのかもと考えると興味深い。普段当たり前に利用している設備にどれだけの人の手がかかっているのかを考えるきっかけになった。
・警察は解決策を求めるのでなく、批判・断罪して終わらせようとするが、割とこういうところの方が人間的であるし、ノンフィクション小説に書かれるべき人の姿であるように思った。
・泡雪崩に興味を持った。隧道工事の工夫(発火しないダイナマイト等)の描写が面白かった。
・技術的にも、道義的にも「ありうべからざるもの」を実現させてしまう権威・欲望、そのために注ぎ込まれるとてつもないエネルギーと、その過程で生じる暴力性に圧倒された。また、同じ場所で同じ目的を共有しているものの、決して「仲間」ではない建設現場のあり方や空気感鋭くとらえている作品でもある。
・とにかくどれだけ人が死ぬんだ。知らないだけで今享受しているもの一つずつにこんなドラマがあるんだろう。知ってしまった十字架は重いが忘れずに考えながら生きていく。
・根津だけでなく、命の危険に晒されている人夫たちまでもが隧道掘進にのめり込んでいくのが意外だった。人夫しかり、農民しかり、記録の数字の彼方に埋もれた顔の無い人々を描くのが巧みで、陰に籠った群唱が行間から響いてくるようだった。
・圧倒されてあんまり感想が思いつかない。小説ではなく報告書を読まされた感じ。こんな事実があったんだということを心の隅に置いておいて、今後の人生でじっくりゆっくり消化できたらと思う。
・著者は発表時の世相や価値観を踏まえ、技師や人夫との対立をはらみながらも人間の労働が主人公であり、それが自然を克服する姿を描きたかったのだと思う。しかし、出版からさらに50年が経ち、手に汗握る展開の物語としては読むことはできても、題材となった出来事のリアリティを理解したりすることはかなり難しいのかもしれない。
・作者はこの作品を戦争のメタファーを用いて描いているのではないか。無謀な作戦に従って兵士を死に追いやっていく指揮官。登場人物が創作、という時点で、工事そのものを描くというより作者の思想が前面に出てきているように感じられる。
・ノンフィクションの部分とフィクションの部分から成り立っている作品ではあるが、それがかえって中途半端な感じを与えている気がする。フィクション部分がやや感傷的。
・父親も親戚の大手ゼネコンの下請け会社の人夫頭に頼まれて、出稼ぎにいったことがあり、酔った時など「隧道工事が大変だった」と話していたけれども、真剣にきいたこともなかったので、次の帰省の折にはきいてみようと思う。苦労の連続だったという父と、人夫たちの働く姿が重なって胸にしみた。
・感想は戦争期の異常な体制と空気を教えてくれる作品。包雪崩までは犠牲ゆえの埋没コストと思っていたが御下賜から戦中の空気がわかるようになる。
・物理的に死の危険がある人夫だけでなく、彼らの生き死にが自分の判断、提案にかかっているという、人夫のそれとはまた異なる凄い緊張の中で働き続けている技師たちの苦しさに、立場も近いためか共感しながら読み進めた。
・問題がおきたら次々に新しい手法を考えて対処して、既存のやり方にとらわれずどんどん刷新していくところが気持ちよかった。必ずしも理論が正しくはなく、本当に理論と実践の繰り返しだなと思った。過酷な労働というテーマであればその他にも日本中、世界中に私の知らないノンフィクションの物語がたくさんあるのだろう。
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次回、7月は『ジュリアス・シーザー』シェイクスピア(新潮文庫)です。また、8月以降の課題本も決定しましたので、ご確認をお願いいたします。
次回以降もたくさんの皆様のご参加をお待ちしております。
【今後の開催予定】
★木曜読書会★19:00~21:00
・7/25(木)『ジュリアス・シーザー』シェイクスピア(新潮文庫)
・8/29(木)『墨東奇譚』永井荷風(岩波文庫)
・9/26(木)『夜の樹』トルーマン・カポーティ(新潮文庫)
・10/31(木)『輝ける闇』開高健(新潮文庫)
★POPな読書会(紹介形式の読書会)★13:00~15:00
・8/4(日) 紹介したい本と自作の紹介ポップ(A5サイズ以下)をお持ちください。
★サタデー長編読書会★13:00~15:00
・9/28(土)『アンナ・カレーニナ(上)(中)(下)』トルストイ(出版社は不問)
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