3月の課題図書はジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『たったひとつの冴えたやりかた』(ハヤカワ文庫)でした。3/28(木)開催の木曜読書会には12名、3/30(土)のサタデー読書会には7名の方にご参加いただきました。
「課題図書リストにハヤカワ文庫を入れたかった」という設定者さんが、始めにティプトリーの生い立ちやSF界での立ち位置をしっかり紹介して下さったため、最初からティプトリーの世界に浸りつつ会を進めることが出来ました。
以下、各課題の簡単なまとめです。
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2、あなたがイーアのような、コミュニケーションの出来る異星の種族とファーストコンタクトを果たしたら、どんなことを話したいと思いますか。理由とともに教えて下さい。
・ エネルギー源は何か。平均寿命はどれくらいか。 地球人をどう思っているか。誇りとしているものごとは何か。移動手段は何か。今まで出会った中で困った種族は何か。
・君らんところもさ、めんどうなしきたりってあるの?という居酒屋トーク。
・手品をみせて、おどろくかどうかためす。
・文芸について話したい。異星にも文芸があるのであれば、それを知りたいし、地球の文芸についても伝えたい。
・僕の顔とか、こことか、どんな風に見えてますか?
・とりあえず、食べ物の話を切り出す。
・ちょうど桜の季節なので「お花見」に行きましょう。
・自分の「生」をどのように考えているかを尋ねたい。
4、作者のティプトリーは長い間読者から男性作家だと思われてきた女性作家でしたが、あなたは本を読むときに男性作家と女性作家の違いを感じることはありますか。ある場合はそれが何か教えてください。また、ティプトリーの作品からはどちらを感じたかも教えてください。
・女性作家と男性作家の違い
・プロット構築における精緻さやディテールの作りこみや、登場人物の対話や心情描写における温度感において性差と言うか焦点・力点の差異を感じる。特にSFは。
・女性作家は細かな描写が多く読みづらいという印象がある。
・特に感じたことはない。男性主人公の歴史小説などは、男性作家が多いような気がする。
・ない。ただ属しているコミュニティの中に「男性らしさ」「女性らしさ」という透明な枠があるだけ。
・女性のほうが身近なものを独特な視点で細やかに描写する。男性作家の作品には容姿端麗なヒロイン的な登場人物が一人は出てくる。
・たぶん感じているけど、それが何かよくわからない。
・日常的なディテールへの観察力がある作家は女性的だなと感じることはある。
・私小説や純文学では男女の感性に差があることを感じるが、エンターテイメント小説になると作者の性別をあまり感じない。
・ティプトリーの作品からはどちらを感じたか
・表題作に関しては女性作家っぽい。登場するSF要素が記号によっており「動作」や「形状・素材感」などのメカニカルへのフェチズムというか、物質の描写があまりなかったので。
・女性とわかっているせいか、女性の活躍や、異星人の出産・育児の描写などにそれを感じた。
・女性の登場人物をあっさり殺してしまうので女性かなと思った。男性の作者は、必要性がないと女性をむやみに殺さないような気がする。
・表題作は女の子独特の語り口だったので女性作家をイメージ、2つ目の物語では男性作家をイメージした。(要するに当てにならない)
・翻訳なのであまり男女の別がわからなかった。
5、感想
「たったひとつの冴えたやりかた」
・表紙のイメージと内容が全然違うので驚いた。この甘辛ミックス具合がこの作者の魅力なんだろうと感じた。子供だからこそ純粋な正義感からあの行動ができたのだろう。
・いつかイーアが牙をむくのではと思いながら読んだ。最後が鉄腕アトムの最終回と一緒。
・読み終わってあらためてタイトルを見直すと、当初の印象がまるで違うものに感じられる。1人(+1生物)ぼっち、孤立無援の状況で下す重大な決断を必要以上の感傷で描かなかったのは、じつに冴えたやりかただと思った。
・図書館での異星人同士のやり取りが、三つの連作を遠い過去の物語として縁取っていてお洒落でよかった。連作は、それぞれ吉本隆明の「自己幻想」「対幻想」「共同幻想」に対応しており、よく練られたものだと思う。
・構成も展開も優れており傑作といえる。ジュブナイル小説風の冒頭から、悲劇的結末に至るまで、小説としてとてもよくできている。ハン・ルー・ハンやボーニーとコーの存在も作品に奥行きを与えている。
・宇宙もので若い女の子だったのが逆に新鮮で、身近な感覚で宇宙空間に浸った。読むのに私も時空移動が必要だったので、こんなに時間と空間を確保してからでないと読めない本は初めてだった。
・好奇心旺盛な女の子の宇宙冒険譚だと思っていたら、塩苅峠みたいな最後で面食らった。コーティーは英雄かもしれないが、結果的にそうなっただけで、それを愛と友情と勇気のなんちゃらとか言われても、そうかな?と思ってしまう。
・SFは青年期によく読んでいて、ティプトリーも好きな作家だったので再読できて嬉しかった。他の作品とも色々テーマが重なっていたりするのも今回分かったのが収穫。
・人類種族の恒星時代に入っても資本主義体制が生き残り、リッチな富裕層がいるというのがおかしかった。少年少女の純粋な行動に羨ましさを感じた。
・「お金持ちの女の子が自家用車で家出した挙句、バイオハザードを引き起こしかける」という割としょうもない話だが、最初に読んだときの夏の夕方の飛行機雲みたいな余韻は忘れがたく残っている。bestでもgoodでもない、たったひとつの冴えた(neat)やりかた、というタイトルが冴えてる。
「グッドナイト、スイートハーツ」
・描写が丁寧で展開も面白いがラストが唐突に思える。リハビ療法で表面上は忘れていたが実は無意識化で苦しみ続けていたというまどろっこしい設定になっているのが腑に落ちない。
・宇宙を舞台にした恋愛ドラマのロマンチックな雰囲気が面白かった。
・この話の結末は当時の書評で「とげだらけのボンボン」と言われたそうだが、私はそんなに「とげだらけ」とは思わない。むしろ、このくらいがちょうどいい。
「衝突」
・宇宙の非常に離れた二箇所での出来事が結びついていく構成はおもしろかった。ファーストコンタクトの重要性が再認識された。NASAは多分マニュアルを作っているだろうが、平和的な出会いができることを祈る。
・一番好きな話。異文化コミュニケーションの、相互の齟齬を擦り合わせていく感覚が良い。ヒューマンとジーロの交流が増えたら、”ムルヌー解放運動”とかヒューマン側から起こされるんじゃないだろうか。
・異星生物と人間を交互に描き、難題に取り組んでいるという点では評価ができるが、まったく異なる生物の思考にしてはあまりに人間的すぎるように思ってしまう。「わたしたちを漫画にしたようなんです」(P295)とあると、この星にも漫画があるのかと気になってしまうし、「巨大な冷凍睡眠カプセルがいくつか、使用中のライトがついて」(P331)とあると、なぜ使用中のライトとわかるのか、と気になってしまう。
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木曜読書会後はいつも通り希望者で二次会に、サタデー読書会後は小倉城にお花見に行きました。今回土曜昼開催は初の試みでしたが、無事に開催出来て良かったです。ご参加くださった皆様、まことにありがとうございました。
さて、次回の木曜読書会は、4/25(木)19時~21時、井伏鱒二『山椒魚』(新潮文庫)です。教科書で読んだことがあるという方もいらっしゃるかと思いますが、今読み直すとまた新たな発見があるかもしれません。
また、サタデー読書会は、3か月に一回開催の長編小説専門の読書会にすることになりました。
次回は6/29(土)13~15時、課題図書は谷崎純一郎『細雪(上)(中)(下)』(新潮文庫)です。一人では挫折しがちな長編小説ですが、仲間たちと励ましあいながら頑張って読み切って感想を話しましょう。
木曜読書会もサタデー読書会も、たくさんの皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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