12月20日(木)、第20回木曜読書会を開催しました。
課題図書は吉本ばなな『キッチン』(新潮文庫)。参加者9名、見学2名、レポートのみ参加2名の、計13名の方にご参加いただきました。
今年は『キッチン』出版30周年らしく、新潮社に記念サイトが開設されていますね。この本を選んでくださったRさんも、”課題図書は出版して30年以上経ったもの”という当会のルールを知り、あえて一番新しいものを調べて選んでくださったとのこと。30年前にばななブームを巻き起こした本は、今でも賛否(?)両論たくさんの意見が飛び交っています。
以下、各課題の簡単なまとめです。
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◆課題2◆大切な人、または大切な空間の中で大事な時間を過ごした経験はありますか。あるいは、大切な人、空間が無く一人で立ち上がるしかなかった経験はありますか。
~大事な時間を過ごした経験~
・飲んでいるとき
・木曜読書会!
・胃がんの手術前、妻が手を握って励ましてくれたこと
・キャンプをした時に、焚火に当たりながら話をしたこと
・部屋で猫を膝に乗せて本を読んでいる時間
~一人で立ち上がるしかなかった経験~
・離婚
・28歳のとき東京から知り合いのいない福岡に移住するも、頼りにしていた相手に速攻で振られてしまったこと
・大学受験に二度落ちたこと
◆課題3◆p135「食欲と性欲が同時に満たされる」とはどういう意味だと思いますか。
・第一味覚野からの情報により脳の報酬系が刺激されエンドルフィンが放出されるということ
・性欲=セックスがしたいと言うだけではなく、一緒に居るのが喜びで満腹感と通じる、作者らしい表現
・腹を割ってしまう、癖や嗜好があらわれてしまう、という意味。非恋愛対象の人とでも関係が深まる
・お腹が減っている状況では性欲はわかないので、二人の姉弟のような関係を描写したみかげ流のきわどい冗談
・食事を共にする集団であり、性欲(孤独を癒す、くらいの意味)で結びついた集団でもあるということ
・一緒に食事をすることを、相手とつながっていると感じていること
◆課題5◆感想
・キッチンは復活劇で、キッチン2は自立のお話。ポップなアイテムや世界観で、色々なことをお手軽に教えてくれる稀な一冊。自分の子供たちにもいつか読んでもらいたい。
・若い人が書いた作品という印象。感性に寄り添うというか、気分をうまくとらえて書いている。
・吉本隆明の娘と言う認識だけで読んでいなかった。30年前に読んだらもっと違ったかも。出版社が次々変わっているのが不思議。
・高校時代はストーリーを楽しんだだけだったが、今改めて読むと心震えた。生まれて死ぬまでのリアルな事件が短い物語の中にぎゅうぎゅうに詰め込まれている。
・突飛な設定、主人公への作者の自己愛の投影を感じ感情移入できなかった。事物描写は上手いが感情描写があっさりしすぎ。
・お話自体は好みでないが、心に残る文章や場面が多く、そこだけ何度も読み返した。雄一は母性本能の強い女性を惹きつけるタイプだが、自分はあまり好きではない。
・あらゆるものが冷たく澄んで美しく光り輝くガラス細工のような話。喪失感やぞっとする虚ろなものを感じるが、反射光が眩しすぎてよく見えない。感想が分かれそう。
・若いはずの登場人物が随分物分かりがよく枯れている。この作品のテーマは読んだ人によって違うのでは。23歳でこれを書ける吉本ばななはすごい。
・言葉や描写の新鮮さや巧みさでカバーしているが、どの人物もリアルな像を結ばずほとんど頭に残らなかった。初期設定を満たすためだけの死というのはどうなのだろう。
・個人的に好みではないが、日本文学史上重要な作品でありよくできた小説。幸福、恋愛という部分で、同世代が求めるロールモデルを提示。古典的な孤児小説としても読める。
・みかげと雄一の喪失感や孤独感はあまり深入りして描かれず、もの悲しさがじんわりと感じられる。二人はカツ丼を食べることにより死の共有から生の共有へと転換できた。
◆課題6◆疑問点
・表紙の絵の意味
・あとがきのp196「吉本のあの小説で、この世の女の子のマイナー性が一気に花開いて、表に出て来ちゃったんだよな」の意味。
・なぜ夢の中で会ったのか?なぜ雄一の部屋が分かったのか?
・みかげと雄一は意識高い系、こじらせ系、中二病的だと思いますか(共感できる、できない)?
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ちなみに5回以上参加の方は14名もいらっしゃり、改めてたくさんの方に支えられているなと感謝の念が湧きました。今年も無事に12冊読み切ることができたのは皆様のおかげです。本当にありがとうございました。
改めて、本年中は大変お世話になりました。2019年もたくさんの方とたくさんのことを語り合えるのを楽しみにしております。
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